彼は家を出たことをわたしには言わなかった。

ただ、最近ジムに泊まったりすることもあって…
と、
12月ごろかな?言ってたことがあった。

何気なく聞いた言葉で忘れていたけど
1月に入ってから彼と日中会うとき
家にくるなりシャワー浴びていい?と
シャワーを浴びるようになったので
家で浴びてないのかな?と気になった。

あるときたまたま娘の送迎した朝、
少しだけ回り道をしてジムの前を通ると
本当に彼の車があった。

それからは気になって
送迎のたびに通ってみると
毎回彼の車が停まっていた。

そしてたまたま夜
彼の家の近くを通ったときに彼の家の前を通ると
以前は彼の車がないと必ず点いていた外灯が
彼の車もないのに消えていた。

彼が家を出たこと、
ちゃんと言ってくれたらわたしも安心するし
嬉しいのに
彼は言わない。
まぁそう言うところも彼らしいとは思った。


この前も来てからシャワーを浴びていたので、
とぼけて彼に聞いてみた。

「家に帰ってないの?」

「あぁ。帰ってないよ」

「なんで?大丈夫なの?」

「なんで?帰りたくないから。
大丈夫じゃないからこんなことになってる」

彼はそう少しふざけたような、
投げやりな感じのような言い方をしたが

「え、連絡来ないの?奥さんから」

とわたしが聞くと

「来たよ。でも帰らないって言ったから。」

と、なんでもないことのように言った。

「もういいの。
俺はお前と幸せになるって決めたから。
俺にだって幸せになる権利はあるだろう。
俺の人生なんだから」

彼はそう、キッパリと言った。

あれほど願っていたことなのに、
いざ彼が行動に移すと
少し不安になって日和る自分がいる。

「やばいねー、わたし。責任感じるね。
幸せにしないとね」

わたしが弱腰でそう言うと

「俺のこと幸せにしてくれるんでしょ。
俺を幸せにして」

と彼が言った。