わたしも彼も相当変わってる方だと思うけど
だからニッチなニーズが合うもの同士で
これだけ相性も良いのだと思う。

先日ジムに行くと彼がA4サイズの段ボール製のの薄い包みを渡してきた。

「なに?」

「いいから開けてみて」

わたしが恐る恐る中を開けてみると
ハードカバーの大きな本が出てきた。
古い本の匂いがする。

タイトルを見てわたしはみるみる赤面した。

その本は、80年代に出版された中高年向けの性読本とも言えるもので、
なんと定価は1万円以上もする。

「やだー、なにこれ!」

「いいから。中開けてみて。」

中を開くとそれは、
本当に真面目に中高年の性について書かれた本だった。
今のようにインターネットもない時代、
貴重な情報源だったんだろう。

「えー、やだー」

わたしが恥ずかしくてページをめくっては閉じて彼の顔を見やると

「ほら、まだ本題はそこじゃないから、次行って」

と真面目な顔で言って
わたしがまた恐る恐るページを捲ると
次の章は四十八手特集だった。

「あ、もしかしてこれ!?」

わたしが言うと彼は少し笑った。

その前のいつか、わたしが

「コウくんがいつもする体勢、
わたしコウくんと初めてしたからオリジナルなのかと思ってたら、凄い有名な体位だったんだね。
白鳥麗子にも出てきた」

と言うと彼は

「え、どんな体位?」

と食いついてきたので
松がつくやつ、と教えたことがあり
それ以来興味を持ったらしい。

ページを捲ると1ページごとに体位のイラストと説明が丁寧にしてあって
わたしがいちいち顔を本で覆って隠す様子を
彼はじっと見ていて

「ほらちゃんと見て。
これは?これはしたことあるね?」
「これもあるね?」
「これもあるね?これいいの?」

と、一つひとつ真面目にヒアリングをしてきた。
そして、
恥ずかしがりつつも中身が気になって本を見ては顔を隠すわたしの様子を見たい、と言って
わたしの顔をまじまじと覗き込んだりしていた。
わたしは大学時代に受けた
性の民俗学についての講義を唐突に思い出して
その話をした。

彼とは性の話を真面目にもできる。
もちろん、最中とてもやらしいやりとりをすることもあるけれど
彼は常に
わたしがどうしたら気持ちが良いか確認して
わたしが最大限に悦ぶことをしようと一生懸命だ。

そしてお互い
中学時代、どのくらい性にめざめていたかなど
わたし達はそう言うところも包み隠さず共有していて
それが間違いなく彼との絆を強くした一因だと思う。