数年前、
彼が思わせぶりなことを何度かしてきたときに
わたしは全然取り合わず、そのうち
「薄着?」事件が起きて
彼を避けるようになってしまったわけだけど、
取り合わなかった理由の一つは
気になる男の子がいたことと
もうひとつは
彼には一緒に暮らしている女の子がいたことだった。

しかも、その子は彼が名古屋にいたときに付き合っていた人で、
彼がどうしても地元で生きて行きたくなったときに、
一緒に連れてきた人だと聞いたので、
よっぽど大事な人なんだろう、
結婚するつもりなんだろうな、と
思い込んでいた。

その頃他に気になる人がいたのでわたしはあまり興味なく聞いていたので覚えていないのだが
わたしの家でわたしの友人と飲んだときに、
連れてきた子には生まれつきの持病があって、
病気のことがネックで別れたくても別れられない
と彼が言っていたと友達は言っていた。

こんな関係になってから
その子のことを聞いてみたら、
病気にとって良くない酒もタバコも辞めず
さらに別れ話をすると死ぬ
などと言われるので

「鬱だよね。こっちまで」

と言っていた。

あるとき、
彼が本気で別れようとすると
死んでやるー
と言って、睡眠薬を大量に飲み、
意識を失って倒れたらしい。

彼は救急車を呼び、病院に付き添い、
彼女は助かったけど、
このままではダメになると思って
別れを決意したそう。

一緒に暮らす部屋とは別にもう一部屋借りて、
徐々にそっちに生活基盤を移しながら、
彼女が一人でもやっていけるか、
1年くらい様子を見ていたと言う。
そのときに並行して今の奥さんとも付き合いはじめたと
言っていた。

「奥さん、待つって言ってくれたの?」

と聞いたら、

「いや、知らないんだわ。」

と彼は答えた。

わたしはすごく複雑な気持ちになってしまった。

奥さんは、彼とその彼女のことを何一つ知らず、
自分が二股かけられてる時期があったことも知らず、
幸せに暮らしている。

ただ、たぶん彼が鬱になるくらいに
辛かったときに、支えてくれたのも
奥さんなんだと思う。
わたしが薄着?って聞かれたくらいで
投げ出したときに。

わたしは、彼とは同級生だったから
彼がわたしに言う前から
彼のその話を他の誰かから聞いてた気もするし、
隠せなかっただろうとは思うけど、
でも、わたしのことは本気じゃないから
そんな話を隠さずにするのかな、と思ったりして複雑な気持ちにもなる。

ただ、わたしが本当の彼女なら
わたしなら、そう言う苦しみは
共有したいな、とも思う。
一人で解決できる彼だけど、
辛いときは頼って欲しいと思ってしまう。

彼の奥さんは鈍感な人なのかもしれない。
だから彼は
こんなにも大胆に
わたしに会いにくる。