少し前は、彼の誕生日だった。
たまたま日曜日で
ジムの日だったので顔を合わせたけど
わたしは、LINEではおめでとうって言ったけど
ジムではほかのお客さんもいたので
敢えて声に出しておめでとうとは言わなかった。

わたしの中では
他のお客さんに気を遣ったのだけど
数か月後のわたしの誕生日のときに彼がLINEをくれなかったのは

これが原因なのかもしれない。

冷静になってみるとそう思う。

今にして思えば、おめでとうくらい、
小さい声でも、きちんと声に出して
伝えればよかった。


その週の、
家で会う約束をしていた日
わたしは朝からシフォンケーキを焼き
生クリームと苺でデコレーションをして
100円ショップで買った
Happy birthdayのオーナメントを飾り付けた。

そして
彼が家に着いてから
地元の和牛のステーキを焼いて
サラダと味噌汁と一緒に出した。

「こう言うところが逆にダメなんだよ、
相手を図に乗らせるから!
みっちゃんは尽くしすぎなの」

気の強いわたしの妹はそう言うけど、
わたしは常に好きな人ができると
その人のために一生懸命になってしまう。

彼は
美味しい、
家でもこんなに柔らかいステーキが
食べられるんだね、と喜んで、
ゆっくり味わって食べた。
彼のご飯の食べ方はいつもゆっくりで
本当に綺麗で、
わたしはつい、見惚れてしまう。

彼はそんなにたくさん食べる方ではないので
かなりお腹いっぱいな感じだったけど
ご飯の後にケーキを切って
二人で食べた。

何かの話から
わたしが

旅行のときにバスの中に
旅行バッグを忘れたり
電車の鞄置きの上に
ヴィヴィアンウェストウッドのGジャンを忘れたり
特急電車のポケットの中にお財布を入れて
そのまま電車を降りたり

そんな話をしたら驚いていた。

今でこそ少しマシになったけれど
わたしは一つのことに集中すると
他の方が目に入らなくなる性格で
小さい頃はよく
旅先で財布などを落としては
運良く見つかることも多かった。

コーヒーを淹れてゆっくり飲んでいたら
先に飲み終わった彼が立ちあがり
わたしのそばまで来て
ソファのヘリに腰掛けてわたしの腕を掴み
わたしを膝の上に載せた。

そのまま後ろからきつく抱きしめ
わたしの耳の裏に唇を這わせて首筋にキスをして
耳たぶを噛んだ。